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対中国輸出依存度30%の到来(後編)

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前回の記事はこちら「対中国輸出依存度30%の到来(前編)

3、FTAの問題点

◇国論を二分するFTAの限界

 日本の対中貿易は、現状の延長線でも、2010年の対中輸出依存度は30%になる。もし中国とFTA(自由貿易協定)を締結すれば、FTAは効果があるので、中国依存度は早い段階で35%、40%となろう。台湾でさえ、警戒感を強めているのに、日本の国論はそれを受け入れるだろうか。現状の日本の中国認識からすると、それはルビコン河を渡るくらいの決意がいる。日本にその覚悟は出来ているだろうか。もし、その覚悟がないならば、国論が二分され、中国とのFTA締結は困難であろう。

 FTA締結論は、賑やかである。主流派になっているともいえる。アジア諸国とのFTA、日中韓FTA、アメリカとのFTA、等々、10年前から議論はある。しかし、いまだ実現していない。自由貿易になると、国内の農業が打撃を受けるなど、比較劣位産業を保護したいグループからの強い反対があるからだ。FTA締結は国内政策がガタガタになるという反対論が強く、政治的に難しかった。

 しかし、今度はまったく新しい問題点が出てきたのである。これまでは、まだ日本経済は中国より大きかった。したがって、中国に「のみ込まれる」などという警戒感はなかった。FTA反対論は国内政策を維持できないという立場からの反対であった。しかし、今や、GDPの日中逆転が起きた。中国は10%成長、日本は1~2%成長、今後、ますます中国経済が巨大化し、日中格差は大きくなるというのが普通の見方だ。従来とは、状況が一変したのである。FTA推進という議論は「中国に飲み込まれる」という警戒からの消極論に出くわすことになろう。嫌中・反中意識が残る、いまの日本人の中国認識を前提する限り、それは必至だ。

 国論が二分される可能性が大きい。そうなると、FTAは百年河清を待つようなものである。賑やかなFTA論も「会議は踊る」ことに終わりかねない。しかし、それでは日本の持続的成長は望めない。世界経済の成長センターとなっているアジア新興諸国、なかんずく中国市場を取り込むことが日本経済の活路である。

 成長戦略も、「中国とどう付き合うか」、覚悟が問われているのである。対中警戒感から中国市場への接近を反対されないで済む道はないか。我田引水的なところもあるが、筆者の「東アジア環境共同体」構想はこの隘路をクリアできる。筆者が提唱している「環境共同体」は“部分共同体”であり、かつ政治統合を含まない経済的なものである。これなら、「のみ込まれる」論を誘発しなくて済む。

 筆者は日中FTAに反対しているのではない。近い将来、いまの日本の嫌中・反中の中国認識を転換できるかを問うているのである。中国との一体化を避けるか、輸出増進による利を取るか、国論が二分された状況ではFTA締結は困難であり、喫緊の課題である成長戦略に間に合わないことを問題にしているのである。


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